またヴィンセントは襲われる

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INTRODUCTION
「ただ目が合っただけ」で周囲の人々に襲われるようになった男が、生き残りの戦いの果てに辿り着く《終末》を描いたフランス発の不条理サバイバル・スリラー。
主人公ヴィンセントを『バック・ノール』のカリム・ルクルーが演じた本作は、第76回カンヌ国際映画祭の批評家週間に選出されゴールデンカメラ賞にノミネート。シッチェス・カタロニア国際映画祭では最優秀主演俳優賞を獲得するなど、世界各地の映画祭で高い評価を得た。さらにXYZ films配給によるハリウッドリメイクも決定されている。
DIRECTOR'S COMMENT
「目が合うと殺意が芽生える世界」を通して現実の社会的暴力をどう伝えるべきか。
ヴィンセントは、この不条理な世界をある仮説に基づく実験として受け止めています。私は、彼の行動には心理描写がなく、風刺めいたキャラクター性が特に気に入っています。カリム・ルクルーを主人公に選んだのは、彼が優しくも恐ろしく、そして驚くほどに存在感があるからでした。
この手のジャンルのモチーフに忠実でありたいと思い、本作と同じく迫害や虐待をテーマにした、マーティン・スコセッシ監督の『アフター・アワーズ』を参考にしました。受難の先にある出会いは私たちに互いを癒し合う関係性をもたらすのです。
この映画のユーモアは、悲劇や混乱といった深刻な状況の中から偶発的に生まれる矛盾そのものにあると考えています。
STORY
ヴィンセントはある日、職場で突然暴行を受ける。
ケガが癒える間もなく、今度は別の同僚にも襲われたが、
加害者たちは襲撃時の記憶がないと言う。
「事件の原因は被害者の方にあるのでは」と疑われるヴィンセント。
しかし彼に対して殺意を抱く者は後を絶たなくなり、
見ず知らずの他人ですら命を狙ってくるように。
「自分と目線が合った瞬間に、人々は襲いかかってくる」....
終わらない襲撃の法則をかろうじて発見したヴィンセントは、
生き残りをかけた<自衛>を開始する。
COMMENT
目が合うと襲われる――このワンアイデアの強度。
優れた作品は実感を伴う「IF」を突きつけるもの。
故に恐ろしいほどに身近で、絶望的に面白悔しい。
現実と創意が完璧に融合した一作だ。
これは来る。
SYO
(物書き)
少し目が合った程度でぶつけられる意味のない憤りを見て思う。
世界は暴悪に満ちあふれているのではないか?
常に人々は理不尽な怒りを振りまいているではないか?
この世は地雷原。私も貴方も地雷なのだ。
ナマニク
(映画評論家)
電車や往来で些細なトラブルが起こることはままある。
人間が持つ怒りの芽とでもいうような危うい衝動。
だが本作はそれを全身全霊で信じる愛にまで昇華させる。
思わず息を飲むような、
深遠な美しさに到達する佳品だ。
真魚八重子
(映画評論家)
他人と目が合ったら襲われる。
なんか昔の地元みたいな話だなと思ったけど、
全然それどころじゃないカオスが待ち受けていた。
シュールさを全面に出しながらも、
きっちり暴力の恐ろしさと痛みを描くのが素晴らしい!!
人間食べ食べカエル
(人喰いツイッタラー)
昨今、交通機関や公共の場で「目線を交わす」瞬間が激減している。
皆スマホの中の他者にご執心。
身体がぶつかってもお構いなしか
一気に敵意の目で迎える。
そんな我々の現在を一種のゾンビ映画でもあり、
『ボディ・スナッチャー』的人格乗っ取られ型のスリラーとして落とし込んだ快作。
やはり映画は思考実験の場だ。
川瀬陽太
(俳優)
今まさに起きてる現実かと思わせる空気感と描写。
そしてカリム・ルクルーの強烈な存在感。
悲劇、錯乱の中でも求め合う人間の矛盾と滑稽さが
愛おしく思えた。 
奥津裕也
(俳優)
自我を失って、無差別に襲って来る人間たち。
敵意を向けられ、反撃する者たち。
この構図が社会的なメタファーであるかもしれないし、
人間の本来の性質を暴き出しているのかもしれない。
本意はわからないけれど、
こんなにも突然に暴力を振るわれることが理不尽で、
痛切だと感じる115分。
カメラ越しに見てくるアイツらに、
観客も目線を合わせてしまうことになる!
回避するには、目を瞑って映画を見るしかない法則...。
そしたら、戦闘モードだ!勢い抜群のパニック映画。
もう一つ、ヴィンセントの朴訥とした姿が
ジャン・レノに似てた。(小声)
小川あん
(俳優)